福永令三ークレヨン王国いちご村
第109冊目は、ちょっと息抜きできる短編集「クレヨン王国いちご村」を紹介します。
クレヨン王国シリーズの中には、本作品のように短編がいつか入ったオムニバス形式のものがあります。いちご村はその最初のものです。
本編ですが、お約束通り、枕元にクレヨンの箱を置いて眠る場面から始まります。盲腸の手術で入院した正君におばあちゃんが、わたしのときもクレヨンが現れてお話してくれたから、とクレヨンの箱をお見舞いに渡したのです。
この短編集には、明るいもの、自然と人間のことを考えさせらるもの、いろいろなトーンのお話が詰まっています。
いずれも色彩豊かな、目に浮かぶような描写が特徴です。
表題のいちご村の話は、砂漠の中にみずみずしく実る真っ赤ないちごの話ですし、本当の友達とは何かを問いかける「レールの中のスミレ」では、紫のスミレと白のタチツボスミレが美しく咲いています。
「へちまの主人」は、ユーモラスにへちまとけんちゃんとの交流を描きます。「ブタ別荘」はごんぎつね風に人間と家畜との絆を強調します。最後のおじいさんの叫びがたまりません。
「水色の自転車」は、自転車も想像できるし、それに乗った少女のよしえさんも素敵なおねえさんとして目に浮かびます。そして、カレイが持ったかあさんの手紙。楽しく、くすりとくる作品なので、ぜひ読んで欲しいです。
お見舞いにこの本とクレヨンの箱をセットで贈るのもいいかもしれませんね。
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