3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

井上夢人ーもつれっぱなし

第59冊目は、井上夢人の会話形式の小説「もつれっぱなし」を紹介します。
私は文春文庫で買いましたが、今は講談社文庫から出ているようです。

出版社が途中で変わるっていうこともあるんですね。

さて、この「もつれっぱなし」なんだかルイス・キャロルを思わせるようなタイトルですが、恩田陸の「Q&A」のように誰かと誰かがやりとりする形式の短編集です。それぞれタイトルは『○○の証明』となっています。信じられないことを聞いたとき、私たちはよく、「じゃあ証明してみせてよ」といいますよね。それがテーマになっているのです。

で、この小説は非常に注意深く書かれていることが最後の解説者 小森健太郎のあとがきでわかります。なんと作者は会話で展開する物語をドレミファソラシドの音階になぞらえて、7つのパートに分けて、ちょっとずつ展開していたらしいのです!ウスペンスキーの「七つの法則」というそうです。さすが、凝っていますねえ。

私は初めて読んだときも再読したときも特に気づかず、さらさらっと読みやすいのでそのまま楽しく読んでしまっていました。改めて読み返すと、確かにそんな気も・・・これから再読する人はぜひ確かめながら読んで欲しいです。

この本を買ったのは、井上夢人が組んでいるユニット岡嶋二人の作品が面白かったから、単独で書いているこちらはどうかな?と思ってです。この本も面白かったのでよかったです。

会話で奏でられる音階をお楽しみください。