幸田文ー季節のかたみ
第58冊目は、季節が変わる時期に読みたい幸田文のエッセイ集「季節のかたみ」を紹介します。
幸田文のエッセイ集。相変わらず目のつけどころが面白くて、読んでいると「ふふふ」と笑ってしまいます。
例えば『家具』。「机というのは、ふしぎな家具だとおもう。誰でもが、やたらと何でも乗せてしまう」言われてみればそうですねー。
『ぼけの皮』。ばけの皮ならぬぼけの皮をかぶって、あたりさわりなくすませるというちょっと大人の技を紹介しています。急にしゃきっとしたり、ぼけたふりをしたり、いかにもありそう。
『こわれた時計』。ちょっとした頼まれごとをすらすらできなかったとき、どうするかという話です。簡単なことだからと引き受けたら、いろいろ重なってすぐにできなくなったことはありませんか?私はあります。そんなとき、毎日のように催促がきて、断るのも申し開きするのも気重になり、身動きがとれなくなったらどうしますか?
「重荷に小付の、小付は遠慮なく切捨てること、さらにもう一つは、心の縛られるとき、目を閉じて、真珠の美、鳥の自在、いで湯のうるおいを観じて、気を変えることです。この二つのことは、その後のくらしに幾度役立ったか」
いまなら、さしずめ、なんでしょうね。自己啓発本のテーマになりますね。心の箱をなんとか、とか。心の重荷をおろそう、でしょうか。
『年をとる』。「としよりの話は、どこでもいつもきっと、しあわせというところに流れこみます」
いいなぁ。そういう話を聞いてみたい。
『台所育ち』。「自分の所有物はどれだけあるか、書き出してみたことがおありになりますか」
で、この後、物を整理する話になります。いまなら、さしずめ、こんまり流、ときめきの魔法でしょうか。
拾い読みするだけでも面白いです。
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