中勘助ー銀の匙
第13冊目もスキャンしている途中で読みたくなった本を紹介します。
ときどき、ふっと思い出したように読み返したくなる中勘助の「銀の匙」です。
おけいちゃんやおくにちゃんとの幼少期の思い出を綴った「銀の匙」。
思い出の一つ一つが鮮明で美しいです。
なかでも印象深いエピソードはお兄さんとのやりとりです。ふとしたことから主人公はお兄さんとの距離を置くようになるのです。
「なにをぐずぐずしている」
「お星様をみてたんです」
「ばか。星っていえ」
何かの縁あって にいさん と呼ぶように、空をめぐる冷たい石を お星さん と呼ぶのがそんなに悪いことだったろうかと主人公は思うのです。
そして、にいさんとの決別が決定的になる場面。
「にいさんが魚をとるのに僕はなぜ石をひろっちゃわるいんです」
この後、にいさんはどうして気に入らないのかがいえず、主人公はでもにいさんも寂しいんだろうと思って、いてあげましょうか?と呼びかけるのですが、それには答えがない。
兄弟ゆえか、あるいは別の何かか。
二人の違いをお互いに認めることができたなら、と思うのです。