3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

イプセンー人形の家

第12冊目は、スキャンしている途中でどうしても読みたくなり、スキャンした後、一気に読んでしまった戯曲、イプセンの「人形の家」をご紹介します。

私が読んだのは角川文庫なんですが、もう絶版のようですね。
岩波文庫新潮文庫からどうぞ。

ちょっと脱線

で、ついでにこういう複数の出版社から出ている文庫本の選び方を言っておきますと、まず値段を見ます。半値とまではいいませんが、出版社によってはかなり安くなっています。それから、解説や付録ですね。読む目的にもよりますが、充実しているかどうかを見ましょう。最後に、訳者と相性があいそうかどうか、読んでいて気持ちよく読めそうかどうかですね。それから文字の大きさ、フォントの読みやすさ。以上を総合的にチェックして、どの出版社の本を買うか、決めたらいいと思います。

本題に戻って

イプセンの「人形の家」、今も読むと、当時どれだけ話題をさらったか、すごい戯曲だなあと思います。
何か重大な秘密がある主人公ノラは、それを観客にも来訪客にも匂わせながら、クリスマス前の楽しい雰囲気の中、飾り付けをしています。
序盤は楽しく進むのですが、借金の秘密があばかれそうになる中盤、そして終盤、ノラと夫が出会って初めて真面目な話をするクライマックスへ一気に突き進みます。

主人公ノラが気づくことは、現代にもあてはまるのではないかとはっとさせられます。結婚する前はお父様の手のひらの上で、結婚してからはあなたの手のひらの上で、芸当をして、目をかけて可愛がってもらっていたんだと、何一つ魂が向き合うような話をしてこなかったのだと。

そして、結婚して8年も一緒に住んで、3人も子どもを産んでしまったのは、赤の他人なのだと。もう一緒にはいられませんわ、となるのです。

主人公ノラと夫との闘いは、作者イプセンが当初に意図したように女の世界の論理と男の世界の論理との違いです。
夫を救うためには法律よりも実利をとる女の世界、男の世界では名誉を犠牲にするなんてありえない、法律を守らないなんてありえない、と対決します。
たとえ愛する者のためだって男は名誉を犠牲にはしないと夫から言われた後、ノラの一言が身に沁みます。「それを何十万という女はしてきたのですよ」