阿刀田高ーやさしい関係
第19冊目は、阿刀田高の短編集「やさしい関係」を紹介します。
私はこの本をテレビドラマの原作ということで知りました。
ドラマもよかったですが(主人公の男性をすべて同じ俳優さんが演じ分けていた)、本もよかったです。
短編はすべて女性の名前がついていて、名前にちなんだストーリーが男性側の視点から語られるという形式です。主人公の職業や年齢はバラバラですが、総じて中年男性ですかね。
ドラマも本も一番印象が強く、何回も読み返しているのが『幸恵』です。幸福に恵まれると書いて、さちえ。
健康が取り柄と言っていた幸恵は病気にかかります。入院した病室で読みたいと夫にねだる本が三冊。うち一冊は占いの本です。あんまりよく当たるから気持ち悪くなって妹が姉の幸恵から取り上げたというその本、内容を見てみると・・・
病気になった妻を思いやり、奔走する夫の姿にぐっときます。
ドラマでは、また二人でやきとりを食べに行こう、で終わっています。小説もその一節で終わっていて、病気が治ったらいいなあとの思いでいっぱいになります。
冒頭の『勝子』もおすすめです。物語の後半、「恋愛結婚にはかけがえない長所があるわ」という勝子のセリフをぜひ読んでみてください。
そして、ちょっとやさしくしてもらったことを大人になってからお返ししたいという話『寛美』。勘違いがあってもお互いにそっと思いやる大人の対応が見られます。
現代版の賢者の贈り物?を思わせる『夫佐子』。
女はいい縁談は断らないと言われて後から気持ちが揺れるが、やはり女は素直だと信じたくなる『直子』。