3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

干刈あがたー十一歳の自転車

第76冊目は、干刈あがたの物は物にして物にあらず物語「借りたハンカチ」の続編、「十一歳の自転車」を紹介します。

こちらはなぜか表紙画像がありません。残念。

表題の「十一歳の自転車」は、新しい自転車に乗るどきどき、少し遠いお店に出かけるどきどき、お店にまだ欲しいものがあるかどうかのどきどきが相まって、素敵な冒険作品になっています。

「秋のサングラス」はまさにイニシエーションラブ。ほのかな恋心を抱いている人にどうアプローチしていいかわからない青年を描きます。そして、「忙しくて会えない」と言われ続けるようになってしまったのですが、それを友人には話さないことで、成長したことを予感させます。

現代のメルヘンともいえる「星のアクセサリー」が好きで、買ったときは何度も読み返しました。なんていうこともなく、女の子が夢想を繰り広げる話です。

主婦が次の人生に目覚める「たそがれのドライバー」。今なら、さしずめドラマになるのかも。

父の死を気にしながら仕事をする話の「時計」は、なぜか、1巻目の『借りたハンカチ』の中の「日曜夜のショルダーバッグ」とつながっているような気がします。

いずれの話も、登場人物には見えている部分(作者が文章で書いている部分、私たちが読んでわかる部分)と、見えていない部分とがあって、見えていない部分がちょっとした物語に深みを与えてくれるそんなお話です。