3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

中谷宇吉郎ー中谷宇吉郎随筆集

第71冊目は、寺田寅彦と並んで有名な科学者のエッセイ、中谷宇吉郎の随筆集「中谷宇吉郎随筆集」を紹介します。

中谷宇吉郎で有名な言葉は「雪は天からの手紙である」ですが、このエッセイ集では、ぜひ「霜柱の研究」と立春に卵が立つという話の「立春の卵」、地球は回転楕円体だけれど実はまるいと答えるのが一番正しいという話「地球の円い話」を読んでもらいたいです。

「霜柱の研究」は、ある学校での素人研究をまとめて読んだ感想なのですが、「純粋な興味と直感的な推理とで如何にも造作ないという風に」ぐんぐん進んでいく研究なので面白いのです。研究するときの直観力、寺田先生のいう「嗅ぎ付ける力」の重要性を知ることができる文章です。

立春の卵」は、卵はどうして立つのか、立つとすればそれはどんなときなのかを実際に卵を買ってきて、立ててみる話です。

「地球の円い話」は、地球が完全に球形であるというのは間違いだけれども、実用上は完全な球体と思っているのが実は一番正しいという面白い話です。有効数字のこと、測定値の正しさと話が広がりますが、読みやすいです。

雪雑記より、結びの文章を読むと、基礎研究者にエールをおくりたくなりますね。

「寒い目にあって、散々苦労をして、こんな雪の研究なんかをしても、さてそれが一体何かの役に立つのかといわれれば、本当のところはまだ自分にも何ら確信はない。しかし面白いことは随分面白いと自分では思っている。世の中には面白くさえないものも沢山あるのだから、こんな研究も一つ位はあっても良いだろうと自ら慰めている次第である」

フレーフレー基礎研究者!