山本文緒ーシュガーレス・ラヴ
この小説は病気がテーマです。女性にまつわる病気が1つ1つ小説の題と対応しています。『シュガーレス・ラヴ』だと味覚異常というように。
山本文緒の文章はさらっとしています。深刻なことを描いていてもさらさらと軽いのです。
例えば最初の『彼女の冷蔵庫』ー骨粗鬆症。骨粗鬆症になってしまうのは若い女性。けれども、入院した彼女を実母に見舞いに来てくれず、実父も関心なく、継母にまかせきり。せっかく転職した会社からは解雇になり、結婚しようと最後のよりどころにしていた不倫相手からは別れを留守番電話に吹き込まれる始末です。
まあ、そこそこ深刻な状況だと思うのですが、山本文緒の手にかかるとこんな状況がさらさらっと流されて、結末までいってしまうのです。
「生きていく上での鈍痛を描きたい」といっていたそうですが、痛みに耐えつつ、時は流れ、周りの人が変わり、自分も変わっていくというのがうまく書かれていると思います。
人生の鈍痛にたえる人に、すすめます。