3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

幸田文ーさざなみの日記

第46冊目は、幸田文の断筆宣言の後の初小説「さざなみの日記」を紹介します。

お母さんと娘さんとお手伝いさんのホームドラマなんですが、登場人物の描写、特に心の変化をとらえたところが光ります。

●娘と母:男の人を感じて
「きっかけというものはどこにもころがっている。・・・中略・・・会話には、なにかうっすりと色がにじんでいるといった気がして」

●悪気のないお手伝いさんとちぐはぐになる主人
「見ていますと奥さまは、あたしの三倍くらいおかずをおたべなさいますね。ぎくっと来て多緒子は情けない顔つきになる」

●結婚の話:断ることを決めた娘の感想
「ビタミン剤の注射だったって気がしてるの」
「皮膚の一皮下のところでちかちか痛かったけれど、あとさらっとしてかえって元気になったと、そんな気がしてるんだわ」

親の気持ち、娘の気持ち、両方で読める小説だと思います。



★関連記事

【特集記事】幸田文の文庫本18冊紹介まとめ