幸田文ー猿のこしかけ
第30冊目は、幸田文の本紹介に戻って、「猿のこしかけ」です。
再読すると、冒頭からおかしくて笑ってしまいます。
幸田文が父の幸田露伴に頼まれる道場破り。お茶の稽古をどうやって教えているか、ちょっと見てきてくれよ、というのです。どうしたもんかと「入門するんですか」と聞き返せば、「女はなんか一ツ頼むと、きまってごたつくからだめなんだ」と来る。お茶に始まり、踊り、長唄といろいろお師匠さんを回る話が面白いです。
そして、「猿のこしかけ」というタイトル。ふとしたことで、材木屋さんから、猿のこしかけがついている木は使い物にならないという話を聞く。そんな悪い奴だったのか、それを作文の題にしてしまうなんてと思うが、取り替えもできないので、そのままにしておかしいと思うとの文章があとがきにあり、さらにおかしかったです。
山で迷う話の「晩夏」。助けてもらったおかみさんの話が素敵。「誰でも山で迷う人は、自分がくだってる、くだってるときめているんで迷うだよ。くだっているんじゃなくて、大抵そんなときにゃ横這いしてるだよ。山を横に這っちゃ、どれだけ行ってもだめだに。」
面白いなー。人生も似たところありませんか?
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