3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

有吉佐和子ー非色

第6冊目もちょっとずらしてご紹介します。
思い出しながら、再読していたら、どうしても紹介したくなったのです。
有吉佐和子の「非色」です。

「非色」は差別を正面から扱った本です。戦後の占領軍がいたときに知り合ったニグロと結婚した女性が主人公です。子どもを産むのですが、自分の親からも周りからも冷たい扱いを受け、ついに渡米します。そこでは、日本にいたときは、外国人として平等だったアフリカ系アメリカ人、スペイン系アメリカ人、イタリア系アメリカ人などなどが実は差別のまっただ中におり、お互いに相手を見下して、住む地域も分かれている様子が描かれています。
一緒に海を渡った戦争花嫁たちも夫がされている差別によって、一度は散り散りになり、翻弄されていきます。

そして、様々な出来事を経た後、主人公はついに気づくのです。色が差別の原因ではないと!白子の黒人でも差別されている、私もニグロと結婚したら日本人ではなくなった、私もニグロだ!と。
そして、私もニグロの一人となって生きていかなければ、優越感と劣等感が渦巻いている世間を切り開くことなどできないと決意するのです。

ここまでの流れは圧巻です。同時にどうしてこんなことが起きるのか、起きたのか、起きているのかを悩まずにはいられません。
同和問題で、私は教育するから差別が起きるんだと思ったことがあります。でも、この「非色」を読むと、それよりももっと根深いところに何かがあるのだという気がして、ぞっとするのです。