3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

福永令三ークレヨン王国の赤トンボ

第123冊目は、クレヨン王国シリーズでありながら、クレヨン王国との関わりがとってもうすい「クレヨン王国の赤トンボ」を紹介します。

本当はこの本をピックアップして紹介しようかどうか迷いましたが、以下3つのことがあったので、やっぱり紹介します。

(1)クレヨン王国シリーズでありながら、なぜか人間は誰もクレヨン王国に旅しない

そうなんです。この本、ちょっと不思議で、塾をやっているお母さんの子どもとその友達の子どもが主人公です。そして、ひょんなことから交流することになった童話クラブのメンバーとの交流を描いているのです。

童話クラブのメンバーとの交流のきっかけは、童話原稿を誤ってオーブンで焼いてしまったという事故です。その事故で童話の主人公がオーブンから出てくるのですが、家にいついたのが赤トンボ。この赤トンボの能力とは何なのか・・・と作者探しが始まります。

で、この赤トンボ、クレヨン王国から来たということになっているのですが、関連がうすいこと、うすいこと。
いつもの冒険ものを期待して読むとちょっと肩すかしをくらいます。

(2)塾の先生をめぐる人間関係がリアル

福永さん特有の妙にリアルな描写がひかります。テストでいい点をとるとビフテキを食べている子だとか、塾に難しい名前をつけた理由だとか、塾の先生としては尊敬されているけれど昼過ぎに起きてくるような女の人はどうこう陰でいわれているとか。

(3)ナンバープレートの遊び

車のナンバープレートの数字を足したり、ひいたりして、子どもの頃遊びませんでしたか?
「うそ八百メートルゆめ街道」という遊びが描かれているのですが、そこが子どもの頃読んだときは一番印象に残りました。ある人をこいつは魔法使いであると勝手に決めつける遊びです。これもリアルです。

全体的にこの作品はファンタジーというよりも、リアル描写で出来ています。昔を懐かしんだり、病気と闘うってどういうことだろうと思ったり、人生いろいろを考えたいときにどうぞ。



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