3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

福永令三ークレヨン王国月のたまご

第112冊目は、後の大長編につながる一冊「クレヨン王国月のたまご」を紹介します。

もともと、「クレヨン王国月のたまご」は1冊のみで完結する予定で書かれた本でした。出版後、読者から続編を熱望する手紙が届いたことにより、PART2、3と続編がかかれることになったのです。

PART8で一旦終わりましたが、福永さんが気になっていた案件があり(後述)、四土神、道草物語、幾山河を越えて、完結編が追加で書かれ、実際には全12冊で完結ということになっています。

なので、青い鳥文庫もわかりやすくするため、版を重ねたときに、第一部となる本作に PART1 をつけたのだと思われます。

前置きが長くなりました。
本作品は、6年生のまゆみが私立中学受験に失敗し、お先真っ暗、茫然自失になって、ふらふらとクレヨン王国に迷い込むところからスタートします。

まゆみの心を癒す物語でもありながら、恋でもあり、成長の物語でもあります。まゆみの成長を最も実感できるのは、両親について恋人に客観的に語るシーン、そして、エンディングで両親についての理解を変えたと行動で思わせるシーンです。ぜひエンディングを読んで欲しいです。

さて、歴史的にはもう一つ重要なことがあります。それは、鶏のアラエッサと豚のストンストンという名脇役が本作で誕生していることです。東海道中膝栗毛弥次さん喜多さんのように滑稽なやりとりをして、旅や物語を楽しくしてくれるコンビです。

主人公のまゆみも、アラエッサやストンストンも詩を読んだり、歌を歌ったりしますが、これらは伊勢物語のように物語にメリハリをつけてくれます。

この第1作目を読んでみて、気に入ったら続編を読むのがよいのではないでしょうか。もともと1冊で完結するつもりの作品だったので、これ1冊でやめたとしても大丈夫ですし。



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