福永令三ークレヨン王国なみだ物語
第111冊目は、泣けること間違いなしの短編集「クレヨン王国なみだ物語」を紹介します。
クレヨン王国シリーズ第7作目のこの作品、お日様の7つのなみだがクレヨン王国に届いて、それぞれお話になったという7づくしの作品です。
7つのお話ですが、どれもいいです。読み返す前もどれも記憶にしっかり残っていました。
私が一番好きなのは「植木ばちのなみだ」。さとる君が自分の名前をちとると書いてしまったことから、ちとるという名前の植木鉢の話です。植物と鉢との関係を軸に、飽きっぽい人間のこともちくりとさしていて、じわっときます。
子どもの頃、教科書に落書きしたり、遊ばなくなった人形を捨てたりしませんでしたか?「算数の本のなみだ」や「人形のなみだ」はそんな思い出を掘り起こしてくれるでしょう。
いかにも福永さんだなあと思う短編は「カタツムリのなみだ」。あんまりいいとこはないですね、と歌いながら引っ越しするカタツムリのノタムタ君が主人公です。次々と咲く朝顔の美しさにすっかりまいってプロポーズするのですが・・・
同じ恋愛ものでもちょっと違う「赤信号のなみだ」。自分の地位も職務もなげうっての恋に心打たれます。
泣きたいときにおすすめの一冊です。
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