3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

福永令三ークレヨン王国なみだ物語

第111冊目は、泣けること間違いなしの短編集「クレヨン王国なみだ物語」を紹介します。

クレヨン王国シリーズ第7作目のこの作品、お日様の7つのなみだがクレヨン王国に届いて、それぞれお話になったという7づくしの作品です。

7つのお話ですが、どれもいいです。読み返す前もどれも記憶にしっかり残っていました。

私が一番好きなのは「植木ばちのなみだ」。さとる君が自分の名前をちとると書いてしまったことから、ちとるという名前の植木鉢の話です。植物と鉢との関係を軸に、飽きっぽい人間のこともちくりとさしていて、じわっときます。

子どもの頃、教科書に落書きしたり、遊ばなくなった人形を捨てたりしませんでしたか?「算数の本のなみだ」や「人形のなみだ」はそんな思い出を掘り起こしてくれるでしょう。

いかにも福永さんだなあと思う短編は「カタツムリのなみだ」。あんまりいいとこはないですね、と歌いながら引っ越しするカタツムリのノタムタ君が主人公です。次々と咲く朝顔の美しさにすっかりまいってプロポーズするのですが・・・

同じ恋愛ものでもちょっと違う「赤信号のなみだ」。自分の地位も職務もなげうっての恋に心打たれます。

泣きたいときにおすすめの一冊です。



★関連記事

クレヨン王国いちご村 こちらはユーモアあふれる色彩豊かな短編集

【特集記事】クレヨン王国シリーズ 十二か月の旅から黒の銀行まで+月のたまごシリーズ全巻を一挙に紹介。