福永令三ークレヨン王国の白いなぎさ
第108冊目は、クレヨン王国シリーズ初期作品のうち、女の子主人公でおすすめの物語「クレヨン王国の白いなぎさ」を紹介します。
小学5年生のさっちゃんが主人公です。さっちゃんは花札の中からお気に入りの一枚を持ち歩くことにはまっています。節分の豆まき会でカラーテレビを当てるぞ、とはりきって出かけたところから冒険がスタートします。景品に時代を感じますね。
さっちゃんと途中まで一緒に旅をする百点マシンというあだ名の少年、菅原君。百点マシンはその名の通り、テストで百点をとりまくる少年です。よく出来すぎるためにテストがものすごく速く終わり、つまらないので実況中継をしながらテストを解くようになり、先生にいつも怒られるのでした。
さっちゃんはとても強い夢を持っています。その夢が旅をする原動力にもなるし、なんとお金にもなるのです。バクが夢の重さを量って売り買いする動物として描かれています。
ぜひとも読んで欲しいシーンは、さっちゃんがバクに連れられて自分の夢の価値と見合うお城を下見するシーンです。「捨てたらいいんだわ、こんな服」そのとき、夢の大切さに気づくのです。
そして、重大な決心をした後、夢を売った後の百点マシンの暮らしぶりを垣間見るシーンがあります。ここで多くの人は衝撃を受けるでしょう。
作者は百点マシンを脇役の一人くらいにしか考えておらず、小説を出した後に「百点マシンがかわいそう」という手紙をもらって戸惑ったそうです。
小学校3〜5年生くらいで読んだら一番楽しく読めるのではないかな、と思います。大人になってからも、この物語を思い出して、ちょっとどきりとしながら読んでくれること請け合いです。
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