3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

福永令三ークレヨン王国の花ウサギ

第106冊目は、クレヨン王国シリーズ初期作品のうち、女の子主人公でおすすめの物語「クレヨン王国の花ウサギ」を紹介します。

クレヨン王国の花ウサギ、第2作のように番号がついて青い鳥文庫に入っていますが、実際は3作目にあたります。次のいちご村の後に、第2作目のパトロール隊長が文庫に入るという変則的なことになっています。

で、肝心の内容ですが、小学4年生の元気なちほとウサギのロぺが主人公のファンタジーです。

ちほは「けんかのちほちゃん」と恐れられるような女の子。お母さんを早くに亡くし、おしょうさんのお父さんと小学5年生のお兄ちゃん健治くんと一緒に暮らしています。

おしょうさんは元PTA会長でしたが、町の近くの海埋め立てに反対するようになってからは再選されず、反対派の旗色は悪くなってきているという状況設定です。旗色が悪くなったのは、埋め立て地に学校を新設すると賛成派が提案してきたからで、誰もが新しい学校に自分の子どもを通わせたいと思うようになったというあたり、リアルです。

で、お兄ちゃんたち5年生の遠足グループと、ちほ&ロぺがそれぞれ別ルートでクレヨン王国に入り込み、冒険を繰り広げます。
それぞれの冒険は別ストーリーでありながら、お互いに助け合おうと頑張ることで、生き物を通じて気持ちが伝わったり、応援がきたりします。

この作品の最大の特徴が、描写の美しさです。クレヨン王国に伝わる有名なつぼを陶工ワニエモンがつくる話が特に美しく、つぼの図柄の描写をぜひ読んで欲しいです。

そして、エンディングでの花ウサギが舞う場面も、想像するだけでその可憐さと切なさがこみあげてきます。

1作目の十二か月を読んで、次に何読もうかなと思ったら、この一冊をおすすめします。

追記:表紙の絵を変えた新装版が出ています。



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