ゲーテー若きウェルテルの悩み
第97冊目は、ゲーテの有名作品「若きウェルテルの悩み」を紹介します。
悩みといえば、いろいろありますが、本作で描かれるのは恋の悩みです。しかもいろいろな事情があって叶わぬ恋です。
最初のページからネタバレしていると思うのですが、「哀れなウェルテルの身の上についてさがせるだけのものは熱心にさがしあつめ、ここにこうしてお目にかけてみる」という文章から始まります。
つまり、ウェルテルにはもうその身の上に何かが起きて、その上で集めた資料なわけです。そして、「ウェルテルの悩みを顧みて自らを慰め」と書いてあります。ゲーテは恋に悩む人の気持ちを和らげるためにこの本を書いたのです。
ストーリーは書簡形式で続きますが、終わり頃になって編集者の注が挿入されます。「編者より読者へ」の項により、ウェルテルの心の中におこった嵐、身の上にふりかかる悲劇を暗示させます。
この悲劇が特に悲劇らしいのは、ウェルテルが恋するロッテもその婚約者アルベルトもいい人だからです。悪い人が出て来ないから、ロッテもウェルテルにじゃけんにしませんし、アルベルトもロッテとウェルテルを残して部屋から出るという気遣いをするのです!
ウェルテルの恋の病は旅もいやせず、悲劇的な最後を迎えるのですが・・・ もう少し時間があったなら、ウェルテルが移り気であったなら、結末は違っていたでしょう。