夏目漱石ーこころ
第57冊目は、夏目漱石の「こころ」を紹介します。
手紙シリーズの最後を飾るのは「こころ」。最も有名な遺書が出てくるあの「こころ」です。
教科書にも載っているくらいの有名な話なので、ネタバレは気にしなくてよいですよね?というわけで、以下ネタバレ全開です。
私は夏目漱石の本の中で「こころ」に出てくる先生が一番好きです。なぜかというと、悩まなくてもいいようなことでくよくよ悩むからです。
親友と同じ人を好きになり、でも親友よりも自分に気があるようだ、いやないようだと悩んだ末、結婚を先に申し込みます。無事に承諾をとりつけてうまくいくのですが、親友は自殺してしまいます。その自殺を悔やみながら先生は生きていきます。死につつ生きるという感じでしょうか。悩まなくてもいいのに深く悩んでいます。そんな先生に魅力を感じ、関わろうとするのが語り部の「私」です。「私」の真面目さ、生きた教訓を得たいという熱心さに先生の心は動かされ、死ぬ前にその過去を遺書で残すのです。
死のうと思ってずっと生きてきたこと、明治の精神に殉死すること、死のうと思って生きてきた35年間と命を絶った時の一刹那とどちらがよりつらいだろうか、などを考えさせられる本です。