幸田文ーさざなみの日記
第46冊目は、幸田文の断筆宣言の後の初小説「さざなみの日記」を紹介します。
お母さんと娘さんとお手伝いさんのホームドラマなんですが、登場人物の描写、特に心の変化をとらえたところが光ります。
●娘と母:男の人を感じて
「きっかけというものはどこにもころがっている。・・・中略・・・会話には、なにかうっすりと色がにじんでいるといった気がして」
●悪気のないお手伝いさんとちぐはぐになる主人
「見ていますと奥さまは、あたしの三倍くらいおかずをおたべなさいますね。ぎくっと来て多緒子は情けない顔つきになる」
●結婚の話:断ることを決めた娘の感想
「ビタミン剤の注射だったって気がしてるの」
「皮膚の一皮下のところでちかちか痛かったけれど、あとさらっとしてかえって元気になったと、そんな気がしてるんだわ」
親の気持ち、娘の気持ち、両方で読める小説だと思います。
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