幸田文ー駅・栗いくつ
第45冊目は、幸田文のエッセイでもあり短編集でもある「駅・栗いくつ」を紹介します。
エッセイ集の『駅』と短編小説の『栗ひとつ』が一冊になった本です。
『駅』では、駅というものは電車が発ったり着いたりするだけのものだのになんだかおかしな力を持っていると始まりながら、いやな夫の話を聞かされてもちっとも嫌な男の姿が浮き上がってこない『くぼみ』、「死んでも帰りまっしぇん」というおばさんの『湿地』、元気だったころ吹かれた風を思い出して心がすっとつながる『乾いた丘』などが収録されています。
面白いのは似たもの夫婦ではなくて、だんだん嫌なところまでも似てきてしまうという夫婦の話『町はずれ』です。
『栗いくつ』はお手伝いさんと娘と自分との三人暮らしでのあれこれを描いていきます。家族のドラマでありながら、しっとり落ち着いたさまとユーモラスな喜劇が合わさっているところはさすがですね。
幸田文の本をいくつか読んでしまって、飽き足らなくなってしまった方におすすめします。
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