3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

吉本ばなな他ー中吊り小説

第18冊目は、吉本ばなな他の短編集「中吊り小説」を紹介します。
いろいろな作家の作品が一度に読める、とてもお得な作品集です。

「中吊り小説」はその名の通り、様々な作家が列車内の中吊り広告に小説を載せたのがもとになっています。このキャンペーンは1990年から91年にかけて行われました。もともとのキャンペーン小説は単行本化のとき8編でしたが、文庫化にあたって11編が追加されて、お得な内容となっています。

とにかく中吊りで連載すること前提なので、時間がなくても合間に読める、くすっと笑える、どこか懐かしい、ほのぼの、ちょっとしたミステリーなどがまとまっています。読後感はスッキリ!です。

私が印象に残っているのは、異世界の人に出会う体験を通して現在を振り返る吉本ばななの『新婚さん』、男女の思惑がすれ違うさわやかな別れを描いた阿刀田高の『別れの朝』、こんなに短編なのにきっちり落ちをつけてミステリーに仕上げた赤川次郎の『留守番電話』、挿絵が素敵な高橋三千綱の『心の風景』、町子に振り回される思い出が微笑ましい常盤新平の『街の風景』です。

安西水丸の『遠い夏』は東京タワーの思い出が書いてあって、これを読みながら、スカイツリーに登るのもまた一興かもしれませんね。