3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

幸田文ー黒い裾

第17冊目は、幸田文のエッセイ風小説「黒い裾」を紹介します。

幸田文自身が主人公の小説なので、ひょっと読んでいると、エッセイと間違いそうになります。

金貸しに変に絡まれて、食べ物を押しつけられて、我慢がならなくなり、親に金を借りて借用証を取り返す主人公。父から「重い女だな」と言われえるが意味がわからない。

初めての子どもにひな人形を整えてやりたくて、やりたくて、気持ちが勝ってしまい、立派なのを買う。後からお姑さんに怒られるのですが、身につまされる話です。あなたが一人っ子でないのなら、誰かのおさがりをもらったことや兄弟姉妹の持ち物と比べたことがあるでしょう。そうして、自分の子どもにはこんな思いはさせたくない、と思うことでしょう。私もそう思いました。でも、立派なものを整えるのは最初の2-3人、4人も5人も女の子が続いたらあんたどうするの?、とお姑さんに言われてしまうのです。その通りですね。

そして、私が初めて幸田文の文章を読んだ『段』。戦後の混乱期に闇市で海老を買う話です。客をもてなすため、少しでもいい材料が欲しい私と闇市場商人とのかけひきを描きます。
いい材料を仕入れて、恥ずかしくない料理ができると思ったのもつかの間、お酒を試験した結果が返ってこない。娘がかえってきたときのはらはらどきどきを感じてみてください。
当時の事情がよくわからない場合は、巻末の解説がとても親切です。



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