幸田文ーちぎれ雲
第16冊目は、幸田文のエッセイ集「ちぎれ雲」を紹介します。
なんといっても本書の読みどころは、父の臨終の場面です。
「いいかい」・・・「よろしゅうございます」・・・「じゃあおれはもう死んじゃうよ」
この前に、おとうさんが殺されるなら私も一緒に死にたいというやりとりがあって、それは違うと諭される場面があるのです。死んだら死んだとだけ思え、という父。それではあまりに悲しいですと反発する娘。云いたくても云いきれない思いのやりとり。
『終焉』以外にも、美人論を聞いて自分の顔を考える「れんず」、父と二人でした「旅をおもう」など佳品がいくつかあります。
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