幸田文ー闘
第8冊目は、幸田文の「闘」です。
病気と闘う人々の姿を描いた小説です。題名は「とう」と読みます。
初めて入院してくるもの、死の床にあるもの、様々な人がいる病室。
主人公は闘病生活10数年というベテラン選手です。
彼は死と向き合いながらも、決して病気に屈せず、最後まで生き抜こうとします。物語の中核はそうですが、読みどころは幸田文ならではのきめ細やかな描写だと思います。
初めて入院するおじいさんの不安、家族の気遣い、これまで生きてきた人生を象徴する言葉「左官屋は平らが大事だ」。
病院で淡く芽生えた恋。病院ゆえに将来を悲観して逃げ出す二人。
闘病のベテランが死者にたむける、汲みたての水を使ったひっそりとした儀式。
先生と看護師さんの闘い。人の好さで難しい患者を押しつけられてしまう(言い方は悪いですが、想像できますよね)場面。
苦しいときこそ、取り出してじっくり読んで欲しい、そんな小説です。
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