3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

幸田文ー北愁

第7冊目は、再び幸田文に戻って「北愁」をご紹介します。

いとこの話です。
勝気な女の子と繊細な男の子。傍から見れば(時代背景を考慮して怒らないでくださいね)逆だったらよかったのに、と言われるパターンの二人です。

女の子から見れば男の子はじれったく、なんでこんなところにほくろがあるんだろう、と思うほどです。
ほどなく、両者に縁談がもたらされ、お互いに相手を決めて結婚します。

この後もいろいろな試練が双方に降りかかるのですが、最後に話をしにいったとき、やはりとんちんかんで話は合わないのだけれど、いとこという血縁で調和したところもあると気づく。
ハッピーエンドにはならないけれど、ずしっとした重みのある話です。

短編集にはこのいとこ編のハッピーエンドとも思える話があるので、また紹介します。

★追記
いとこ編のハッピーエンドと思えた話は、エッセイ集『包む』の中の「きれいなひと」という短編でした。
男女の関係はいとこではなく、周りからちょうどいいつり合いだと思われている二人。けれども、一緒にはならないのです。若草物語ジョーとローレンスが一緒にはならないように。

そして、二人とも別の人と結婚して、子どもをもうけ、子どもが大きくなってから出会うのです。親の欲目を入れてもいい子に育ったという自信を持っています。でも、後になったからこそわかる、あなたのところの子どものよさを学ばせてやりたいから、ちょくちょく遊びにこさせてちょうだいね、とお願いするのです。
「北愁」が悲劇編なら、こちらはハッピーエンドの短編ですね。



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