神林長平ー言壺
最初に紹介したい本は、神林長平の「言壺」です。
この本を読んだ後、似たような本が読みたくて、禁断症状になり、同じ作者の本を長らく探していましたが、見つけられませんでした。それくらい特徴的な本です。
本の形態が変わってしまい、本の執筆方法も今とは変わってしまった近未来を描いています。
万能支援を目指す人工知能搭載の機械ワーカムは、とても便利です。作者の意図までをも質問によって明らかにし(現代でいえばコーチング?)、あらすじを表示して書きやすくしてくれます。
一方で、弊害もあり、私を生んだのは姉だ、彼女は蛾のように美しいなどのワーカムが正しくないと思う文章は入力できないのです。
ワーカムと作家とのやりとりも面白いですが、さらに時代が進んで、言葉を書き手のIDなしに放置することができなくなった世界(常に言葉は誰かの言葉ポットにあり、発言が誰のものか管理している)が面白いです。
古代の紙形態の本を未来の老人が釣り上げて思う感想など、今読むとさらに楽しめると思います。
中公文庫で、本屋に行くたびにチェックしているのですが、なかなか並んでいないというのが残念なところです。買おうと思われた方は事前に検索してから出かけられるのがよいかもしれません。