3回以上読んだ文庫本を紹介

3回以上読んで本棚に残した(売らなかった)上に、自炊して電子書籍化し、さらにもう1度電子データで読んだ文庫本を紹介します。

筒井康隆ー言語姦覚

第132冊目も筒井康隆が続きます。こちらも非常におすすめのエッセイ「言語姦覚」を紹介します。

残念ながらAmazonだと画像がないですねー。

えーこの「言語姦覚」、本屋で見て一目読みぼれして、すぐに買いました。なんといっても、冒頭の「現代の言語感覚の分析」が素晴らしいです。

私たちがよく口にしているであろう言葉、「あのですね」「どうも」「そうですね」「と言いたい」「よろしいんじゃないですか」「べつに」「ひとことで言って」「とでも言うのだろうか」「前向き」などが、使用シーン、使用するときの感情ごとに分析してあるのです。それを書いた文章も非常に面白いです。

そして、この本を買ったおかげで、マリオ・バルガス・リョサの「緑の家」を知りました。緑の家の紹介文をぜひ読んでみてください。必ず読みたくなること請け合いです。

A型社会の弊害、タンク・タンクロー讃、オールタイムベスト10など、読みどころが満載です!



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マリオ・バルガス・リョサー緑の家:これぞ小説好きのための小説。

筒井康隆ー残像に口紅を:世界から文字が1文字ずつ消えていく。実験的おすすめ小説。


筒井康隆ー残像に口紅を

第131冊目は、筒井康隆の実験的小説「残像に口紅を」を紹介します。

この本は大・大・大おすすめです。

まず、設定が面白いです。世界から1文字ずつ文字が使えなくなっていく=消えていくという設定です。だから、小説を書いている途中で、いきなり「あ」が使えなくなってしまうわけです。

けれども、さすが筒井康隆、不自然ではない言い回しで小説がえんえん続いていくのです。小説の後半に、喫茶店でジュースを注文するときの言い回しが面白かったです。もちろん、ジュースという言葉は使えない状態になっています。

この小説のおまけについている論文も面白いです。小説が2度楽しめること請け合いです。筒井康隆がどのようにしてこの小説を書いたかの推理から、本当に禁止文字が使われていないかの検証までしています。

最後に、私はこの小説の1つ1つの文字が消えるところについているイラストが好きです。一番好きなのは□るぱかのイラストですね。ぜひ、現物は手にとって確かめてみてください。



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筒井康隆ー言語姦覚:A型社会の弊害は必読です。


ロレンスーチャタレイ夫人の恋人

第130冊目は、ロレンスの「チャタレイ夫人の恋人」を紹介します。

発刊当時は問題作とされた作品です。今読むと、それほど問題作とは思えません。時代背景の違いでしょう。

戦争によって下半身不随となった夫を持つチャタレイ夫人。結婚の秘密はセックスにあるのではない、と言い切る夫。妻はなんだかわからない不案にさらされます。

「なぜ現代の男女は本当に好き合うということがないのでしょうねえ?」

そして、気づくのです。27歳にして肉体の美と輝きを失い、老け込んでしまったことに。
日陰者ジュードあたりと合わせて読むと面白いかもしれませんね。

小林泰三ー玩具修理者

第129冊目は、小林泰三の「玩具修理者」を紹介します。

この本には「玩具修理者」と「酔歩する男」の2編がおさめられています。ホラー大賞「パラサイト・イヴ」と同じ頃に買いました。

玩具修理者」はオチが鮮やかなサスペンスホラーといったところです。
「酔歩する男」は、いわゆるタイムトラベラーものです。人生を何度でも繰り返すことに憧れる人もいるでしょう。でも、この作品を読んで、そういういいイメージはなくなってしまいました。受験生を何度でもやる。大事な記念講演の日にトラベルして、自分がつくったプレゼン資料を初めて見る。そんな経験たまりません。

平和な日常を送る人へおすすめの一冊です。

太宰治ー斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス 外七篇

第128冊目は、太宰治の「斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス 外七篇」を紹介します。


斜陽、人間失格、桜桃、走れメロス、など有名作品がてんこ盛りでお得な一冊です。

「斜陽」は、あの有名な書き出しの作品です。

朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、
「あ。」
と幽かな叫び声をお挙げになった。
「髪の毛?」
スウプに何か、イヤなものでも入っていたのかしら、と思った。

そして、太宰治といえば人間失格
その昔、太宰治の映画を見たことがあります。そのときの題字が荒波をバックに白抜きで「人間失格 太宰治」でした。まるで、作品名ではなく、人間失格と烙印を押されたようで、思わず吹き出してしまったことを覚えています。

子どもより親が大事と思いたい、の「桜桃」。大人になってから読み返すと名作ですね。
最も有名な「走れメロス」、似た系統で「駆け込み訴え」も収録されています。
富嶽百景」も好きですね。

富士には、月見草がよく似合う。

久美沙織ー新人賞の獲り方おしえます

第127冊目は、久美沙織のハウツー本「新人賞の獲り方おしえます」を紹介します。

この本ですが、新人賞の獲り方といいながら、作文の書き方の本です。そして、審査員からみた評価のしかた、見るポイントが語ってあって、とても面白いです。

実際にこの本を読んで瀬名さんは「パラサイト・イブ」を書いて賞に応募したそうです。ということもあって、非常に実践的で面白い本です。

もう一度だけ、これがトドメの、と続編も出ているみたいですね。

ヘルマン・ヘッセー車輪の下

第126冊目は、ヘルマン・ヘッセの有名な小説「車輪の下」を紹介します。

主人公のハンスは天分のある少年です。州の試験に二番で通り、神学校に進学します。試験に受かり、ほっとしたのもつかの間、すぐにギリシャ語で聖書を読む予習に入ります。ところが、ギリシャ語だけでなく、すぐ他の教科も予習したらと先生に言われるのです。そして、ハンスの楽しみは釣りと泳ぎだったのですが、ヘブライ語や数学の時間にあてられるのです。真面目なハンスはそれを受け入れます。

神学校に行ったハンスは自分とは違う性質をもった生徒、ハイルナーにひかれます。ハイルナーにひかれて一緒に過ごすようになり、次第に成績が落ちていきます。たびたび先生に呼び出されるようになり、ハンスはハイルナーと勉強との板挟みで悩みます。顔色が悪くなり、授業中でもぼうっとするようになりました。

ああ、われはいたく疲れたり。
ああ、われはいたく弱りたり。
さいふに一銭だになく、
懐中無銭なり。

ついに神学校から家に帰されたハンスは、父親のすすめるままに機械工の見習いになります。そして・・・悲劇は訪れるのです。

登場人物に悪意を持った人はいません。誰もがハンスのためを思い、ベストと思う助言をするのですが、ハンスはだんだん追い詰められて行き場を失ってしまうのです。休息できないことの恐怖を描いた作品。